クロネコヤマトに見る損益分岐点設定の難しさについて【2017.03.25】
巷ではクロネコヤマトが宅配便の受注を抱え込みすぎて取引効率が著しく低下し、従業員の労働環境も悪化するとともに利益が下落すると
いう厳しい事態に直面していることが話題となっています。
本来業務ボリュームが増えれば事業規模を拡大して対応すれば間違いなく売り上げも利益も増大すると思われていた
宅配事業は一定量を超えた業務引き受けで著しく生産効率を下げ、しかも収益悪化も招くというきわめて特異な事態に陥ってしまったことがわかります。
実はこうした状況は米国で同業者の大手として事業を行っているFedexでもまったく同様の事態を引き起こしており、
取引ボリュームと利益との関係に隠れた損益分岐点が存在していることがわかりつつあります。今回はそんな話に注目してみたいと思います。
クロネコにおけるアマゾンの配送ボリュームはたった3%
実はこのクロネコヤマトの宅配を窮地に追いやることになったのがアマゾンの新たなサービスであるプライムという顧客サービスが
原因ではないかと言われています。これまでのアマゾンの発想ボリュームというのはクロネコヤマト全体のたった3%程度ということ
ですから決定的な影響を与える存在になろうとは誰も思わなかったはずですが、実はこのプライム即日配達を約束する仕組みになっており、
これまで最低翌日に配達していたものを当日に配送してしまうもので引き受けてしまったことからクロネコヤマト側はとんでもない
労働強化になってしまったことが明らかになりつつあります。
もともとクロネコヤマトは事前段階でかなり細かく配送の日時を設定できるわけですが、当日配達というのはとにかく当日間に合うこと
を必死に守る仕組みであり、本来そこまでして届けてくれなくてもプライム会員になってしまうとかなりのものがそうした配達の対象に
なってしまうことがアマゾンに猛烈な労働強化とコスト効率の悪さをもたらすことになってしまったようなのです。
複数の商品をアマゾンのプライムで購入しても配送センターは商品カテゴリー別に異なるところから送られてくることになるため、完全に単品ごとの配送になって
しまいますし、結局当日届いても時間帯が逆に指定できないためせっかく無理して当日の夜に配達しても結局不在などというかなり残念なケース
も頻発することから、アマゾンが勝手に顧客にギャランティーしたサービスが引き受けた運送業者のクロネコにとってはとてつもない非効率業務
になってしまったというわけです。
ロジスティックスサイドの効率化と異なる仕組みを持ち込む事業者が問題
これまでクロネコヤマトは自社のロジシステムとしては顧客の利便性を
最大限に活かしたものを提供し、ネット上でも荷物がいまどこにあるかを可視化して机上で考えられる最善の仕組みを提供してきたものと思われます。
しかしアマゾンという配送業者とは別の視点で顧客にインセンティブを与える事業者が登場し、まあ届けばそれにこしたことはない即日配送を多く
の商品分野で顧客に提供したことから、ヤマトの確立しているしくみとの親和性を欠く結果となり、その不測部分を従業員の追加労働で補うことに
なったことが、労働生産性を下落させる大きな原因になっていることはどうやら間違いなさそうな状況です。
冒頭にも書きましたが米国のFedexも多くの
配送業務を受け持つようになってから効率が下がり利益が格段に落ち始めているといいます。
やはりこうした配送ビジネスは拠点、配送を担当する人員、輸送手段などが適性ボリュームを超えてしまいますと間違いなく生産性を落とすことに
なってしまい、適性規模と扱いボリュームについてかなり精査しませんと、ただ扱い学だけで国内扱い一位を目指しても儲かるビジネスにはならない
ことを改めて示現させる結果になっている点は注目されます。
一般的にメーカーなどでも価格と販売額の設定を細かく変えた場合にどこがもっとも理想的な損益分岐点になるのかをシュミレーションし実際に
効果をあげることが相当難しいと言われていますが、今回の宅配ビジネスでも同様の問題が生じていることを感じさせられます。
アマゾンが自社で一生懸命ドローンにて配送ができないか模索しているのもこうした状況を見るとよく判るわけで、ロジスティックス業界のコンサルに携わるかたはこうした別の視点でのコンサルというものにも注目しなくてはならないことを改めて意識させられることになるのではないでしょうか?
人が係わる以上単純にIT化だけでは解決できない領域も存在するということを改めて肝に銘じさせられたお話しです。
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