いつかは到来するとは思いながらまだ先の問題とされてきた少子高齢化・人口減少の企業に与える問題は予想よりもはるかに早く顕在化してきており、いよいよ国内の生産労働人口減少という深刻な問題を現実のものにしようとしています。
人手不足は深刻化しており、勤労者の働き方自体を大きく変えていくことが求められるようになってきているのです。
こうした状況に対応して政府も働き方改革実行計画を開示して副業を推進するとしています。
これまで終身雇用制度の強かった国内の労働市場では副業ができる状況を雇用環境の中に作り出すことはかなり難しいものもありますが、徐々に認めざるを得なくなっていることは間違いありません。
足元で副業を認める会社の発想というものはどういう視点に立っているのかについて考えました。

副業を認める会社はいくつかのメリットを見出している

本来人手不足なわけですから本業に集中するべきと考える企業が多いはずですが、それでも副業を公式に認める会社は増加しつつあります。
こうした企業が副業の認可により得られるメリットとしては次のようなものがあげられます。

・人材流失の防止に寄与
終身雇用が崩れ、従業員の定着率が低下する中では希望職種につけなかった社員が簡単に離職するケースも少なくありませんが、副業を認めることでそうした不満を解消することができ離職率の低下に寄与するという見方がでてきています。

・多様な人材の獲得
入社する段階から副業が認められている場合には、これまで以上に多様な人材を獲得できるチャンスが生まれ、雇用する企業にとっても優秀な人材を活用できるようになるという期待も高いようです。

・既存の人材の活性化
既存の人材が副業に携わる場合には、これまで特定の業界の狭い領域だけでビジネスをしてきたものが逆に多角的視点を身につけることができるようになり、本業では習得できない多様な経験をすることにより本業の活性化にも良好な効果をもたらすという考え方をもつ企業も増えてきているのです。

中小企業は副業で具体的な効果を享受し易くなる

こうした企業の考え方の変化は中小企業の領域にも広がっています。
もともと中小企業の場合には年収などの待遇面で大手の企業との格差があることから人材の流出も多くなりがちですが、副業を認めればそうした部分を社員自身が補うことができるようになるため、逆に定着率を高める効果につながると考える企業が増えているのです。
また副業が認められた大手企業から逆にパートタイムなどで働きにきたり、テレワーカーとして労働を提供してくれる人材が増えれば、これまでなかなか雇用できなかったような多様な能力の持ち主を活用することもできることから、むしろ副業を認める社会は中小企業によりメリットの大きなものになる可能性がでてきているのです。

ネットを通じて労働を提供するようなクラウドソーシングでもこれまでの終身雇用では獲得できなかったような才能をもった人材を利用することができるようになるわけですから、限られた生産労働人口が流動的に労働提供を行える社会は大手から中小まで企業全体に新たな活力をもたらす仕組みになる可能性が高まっているといえるのです。 ただ、こうした副業は業態や職種によっても様々に異なる部分があり、すべての仕事で副業が確実に成果を上げることができるかどうかはまだまだ試行錯誤の状況であるといえます。
RPAのようなロボットソフトウエアの導入が進めば多くの企業で人がやるべき仕事の領域も変化してきますから、生産性を高める手法についても大きな変化が到来しようとしています。こうした中で副業が認められる社会がどれだけ雇用する側にも働く側にもメリットあるものになっていくかが注目されるところです。