PMOとはプロジェクトマネジメントオフィスの略で10年以上前は外資系企業にだけ設置された社内組織となっていたことが多かったのですが、近年では本邦企業でもPMOという組織を社内に設置しすることも多くなっています。

誰しもが想定できる一般的なPMOの役割としては・・

・プロジェクトマネジメントフォーマットの標準化
・プロジェクトマネジメントに関する研修実施および人材開発
・プロジェクトマネジメントの業務支援
・プロジェクト間のリソースマネジメントやコストマネジメントサポート
・企業に最適化してプロジェクト環境整備の実現
・プロジェクトに付随する関連管理業務の実施

などが挙げられています。

しかし実際のPMOが設置されるタスクの中身によってこの役割はかなり変化するようになっているといえます。
現在、本邦企業でのPMO設置の役割としては概ね次の4つのようなものが多くなっていると言われています。

1)大規模プロジェクトを運営するためのPMO
2)企業全体のプロジェクトマネジメントPMO
3)R&D組織に特化したPMO
4)企業改革を実施するためのPMO

以上のようなものが主になっていると言われます。
この4つのタイトルを見ただけでもPMOが果たすべき役割が異なることはご理解いただけると思います。
以下、順番に4つのPMOの役割をまとめてみますと次のようになります。

1)大規模プロジェクトを運営するためのPMOの役割

大規模プロジェクトにおけるPMOの役割は、その規模の大きさから発生するリスクを軽減し、いかにガバナンスを発揮するのかが大きな目的になります。
通常大型プロジェクトはマネジメントが容易になるようにサブプロジェクトに分割することで運営していくことが多くなりますが、このサブプロジェクト間の調整などを含めていかに潤滑に期限内でコストの範囲内での完了がはかれるかに特化したマネジメントということになります。
大型プロジェクトの場合は標準化したプロジェクトというよりも一度限りの特殊な方法を利用しても確実で円滑にプロジェクトが進行し完結できることが大きな目標となり、PMOのメンバーもそれを重視した働きをすることになります。

2)企業全体のプロジェクトマネジメントPMO

企業全体のプロジェクトマネジメントPMOは別名コーポレートPMOなどと呼ばれるケースも多いようですが、このPMOの役割としては企業全体でプロジェクトマネジメントの能力向上をはかることが大きな目的となります。
したがって自社における企業内プロジェクトマネジメントの方法論の確立とその定着化、プロジェクトマネージャーの要請教育など人材育成にも関わるのがPMOの役割となります。 先行企業ではこうしたコーポレートPMOを設置する動きもありますが、そのケースは比較的まだ少ないのが現状です。

3)R&D組織のPMO
製造業におけるR&D、つまり飛躍的な業務革新を実現するためのPMOというものも存在するようになってきています。かなりエスタブリッシュされた製造業においても新技術などが市場に広範に導入されることによって大きな技術革新を必要とするケースが増えています。たとえば自動車における自動運転などでは新技術の導入は自動車という領域からまったく外側のIoT技術へと移行しており市場のイニシアチブととる企業も大きく変化しているわけですが、こうした状況下でR&D技術の革新プロジェクトをになうPMOがこれにあたります。
R&D組織のPMOはとにかくスピード感をもって改革を実現することが大きな目標となるため技術だけではなくそれを担う組織をどう改革するかについてもプロジェクトの責任を負うケースが増えています。

4)企業改革を実施するためのPMO
企業改革を実施すためのPMOは既存の改善や部分改革・最適化ではなく本格的な変革・英語でいうところのトランスフォーメーションを担うような改革に責任を持つPMOということになります。
通常の企業変革では改革のビジョン、それに伴う戦略構築、そしてその戦略を実現するプロジェクトといった形にプロセスが分かれますが、トランスフォーメーション担当のPMOはこうしたプロセスすべてにかかわる企業内戦略コンサルタントのような動きをすることもあるのです。

このようにPMOと一口に言っても各企業内での役割はかなり変わってきており、いわゆるITプロジェクトを運営するPMOとは異なる業務や人材も多く投入されるようになってきている点はあらかじめ理解しておくことが必要で、それぞれのPMOの業務内容は一段と高度化していることが窺われます。