AIは想像以上に早いスピードで社会に導入されはじめており、それに職を奪われる人たちが大量に出現することになるのではないかという危機感がかなり高まりを見せています。もちろん導入をはかる側は人が使いこなせばいいだけの話でAIは人の仕事を奪わないと相当なアピールをして多くの労働者の不安を取り除く作業をしていますが、徐々にその先行きが見えてきているように思われます。

■コモディティ化しているビジネスは完全にAIにとって変わられる
足元ではAIまでは実装されていないRPAの導入が驚くべき速さで進んでいます。とくにこのRPAは欧米企業よりも本邦企業での導入が盛んに行われ始めている点が注目されています。その結果銀行などでは大量のコモディティ化したオペレーションビジネスに携わってきたホワイトカラーが余剰人員として他の部門に移動されることになるのか早期退職で追い払われることになるのかがに関心が集まりつつあるようです。
複数のITシステム間をマニュアルで入力することを完璧にやってのける人がこれまで現場の部門では仕事に精通したできる人材として評価されてきたわけですが、こうしたIT間の接続をロボットが担うようになってしまうとこれまで高い知見と思われてきたことが完全にバリューではなくなってしまい、しかも夜でも土日でも働くロボットが導入されてしまうと、すっかりコモディティ化の領域に含まれてしまうことが露見し始めているのです。

おそらくこれまで仕事をしてきた人たちでその領域で非常に高い能力を発揮してきたと自負する向きは自分の仕事がコモディティ化したものだと評価されることにかなりの違和感を持つことになると思われますが、業務のコモディティ化というは現場で働いている人の感覚とは必ずしも同一ではなく、だれでもできる単純作業だからコモディティ業務ではないということをまず考えなくてはなりません。
AI実装ではないRPAでもこの状況ですから、AIが本格的に導入され、しかもディープラーニングが進めばコモディティの定義も領域にも大きな変化が訪れることは覚悟しておかなくてはなりません。

ベストプラクティスだけ語るコンサルも危ない

こうした視点で見ますと、士業やコンサルタントといった領域でも実はコモディティ化してなくなる職種がでてくる危険性はかなり高まっているといえます。
たとえば弁護士でも判例だけ調べて訴訟を行うような向きはこれまでいかに大量の判例を知っているかが大きな知見になり差別化のポイントとなってきたわけですが、これはまさにAIが得意な世界であり、オペレーショナルな業務だけを続けている輩は弁護士といえどもAIにとって代わられる可能性が極めて高くなります。またビジネスコンサルの世界にもこうした動きが加速する可能性が出てきています。
たとえば特定業界のベストプラクティスを非常に理解しており、それを売り物にしてコンサルをするといったアプローチはごく近い将来コンサルの仕事として成立しなくなる可能性があるということです。このように付加価値のない知見を引き出してくるようなビジネスはAIにとって代わられやすいことがわかります。

それではどういう業務が生き残るのか

AIができない仕事としてよく言われるのが、既存の枠組みとは全くことなるクリエイティビティの高い仕事ということになります。既存の人の知見では考えつかないようなレイアウトやデザインを生み出せるデザイナーのような職種は確かに生き残る可能性は高いものといえるでしょう。しかし働く人たちのほとんどがデザイナーを目指すわけにはいきません。
もうひとつAIが非常に不得意としているのが不合理的な判断を下すということです。人や企業が社会生活を送っていますとすべてがベストプラクティスのように竹を割ったような明確な判断で前に進める場面ばかりではないことが往々にしてあるわけで、人や企業の行動も矛盾に満ちていたとしてもなんとか判断しプライオリティをつけて前に進んでいかなくではならないのが実情です。しかし人の経験や判断をもとにしたAIはこうした不合理な判断が非常に不得意とされています。実はこの領域にはまだまだ人の一日の長が残っているといえるのです。

このようにAIの導入が進むにつれてAIにとって代わられる仕事の領域や内容といったものも徐々に変化をとげており、当初考えられていたものとはかなり変わりつつあることを理解しなくてはなりません。
これからAI時代に生き残るコンサルを目指すにはこうした異なる物差しで既存の業務を眺め、評価していく姿勢が非常に重要になるのではないでしょうか。それができる人こそAI時代に生き残る人材となってくるものと思われます。