コンサルティング業界はここ10年以上、戦略コンサルからSIの実装、さらにアウトソーシング、BPOの取り込みに世界的なレベルで多くのファームがシフトを変えてきており、上流工程の戦略部分だけをコンサルが担うという時代は遠い過去のものになろうとしています。
そして足元では、新たなテーマがフォーカスされようとしているのです。
それがデジタルトランスフォーメーションや、AI、RPA、IoTの活用、そして統合的なクラウドの利用といった領域なのです。

デジタルトランスフォーメーションやAI、RPA、IoT

 ■デジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーションとは、DXなどと呼ばれるもので2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念ですが、ここへ来て再度大きな注目を浴びる概念となっています。IT専門調査会社であるIDC Japanによれば、デジタルトランスフォーメーションとは「企業が第3のプラットフォーム技術を利用して、新たな製品やサービス、ビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」と定義されており、多くの企業が事業戦略の中心にこのDXをすえて考えるようになってきており、ビジネスコンサルティングファームもこうした動きをサポートするようにDXに取り組むようになっているのです。

■AIの広域的な利用
少し前まではAIというと実験段階のものというイメージが強かったものですが、ここへきて本格的なAIをつかった機械学習などが実用化されるようになっており、AIをどう企業のアクティビティに利用するかが大きなテーマになりつつあります。特にビックデータとの連携、CRMとの連携など既存のITプロダクトとの連携によりこれまでにないサービスや分析を行う動きが加速しており、コンサルティングファームとしてもこの領域に力を入れる状況になってきているのです。

■RPA
RPAとはロボティクス・プロセス・オートメーションの略号を示したもので、産業ロボットが工場のラインで人の組み立て業務を代替してくれるのと同様に、ホワイトカラーの業務領域において人事や財務会計といった従業員が行う業務を代替してくれるロボティクスプログラムのことを言います。ロボットという名称がついていますと人間の格好をしているように思われがちですが、これはプログラムで、パソコンなどを通じて人が行っていた業務をノンプログラミングで代行してくれることから、昨今の残業規制や人手不足などの問題を事務職領域で大きく改善してくれるものとして注目を浴びているサービスです。コンサルティングファームによっては専門の部隊を組織するところもではじめており、RPAはまさにコンサルの大きなビジネスチャンスになりつつあります。

■IoTの本格活用
IoT利用もいよいよプランニングフェーズから本格的に導入し運用してビジネスとしてフィジブルなものにしていく時期にさしかかってきています。しかし各企業ではこの領域に知見のある人材が乏しく、IoT関連でもコンサルティングファームの活躍の場が広がりつつあります。
とくに莫大なデータを収集し維持することになれば、オンプレミスで自前のシステムを構築することからクラウドをいかにうまく使いこなすかが大きなポイントになってきており、グランドデザインをいかにサポートするかがコンサルティングファームにとっても腕の見せ所となっているのです。

クラウドコンピューティングの総合的活用


足元では自前のITシステムを利用することからクラウドを利用してITサービスを活用する時代に大きくシフトしつつありますが、ここへきてパブリッククラウドとプライベートクラウド、さらに既存のオンプレミスのシステムをいかにシームレスに、かつ最適化して効率的に利用するかが企業の大きな課題になりつつあるのです。これまではSaaSのベンダーは自社のSaaSのことだけを考えてきましたし、IaaSのベンダーはパブリッククラウドだけにフォーカスしてビジネスを行ってきました。しかし利用企業はいまやそのすべてを総合して利用するようになってきていますから、いかにシームレスに問題なく利用できるかを俯瞰から設計してくれる存在が必要になってきているのです。

これは既存のSIerも同様に課題を抱えていますが、特定の商品にバイアスのかからないコンサルティングファームに期待がかかる領域となってきているのです。
このように一昔前と比べますとコンサルティングファームが扱うサービス領域も大きく変化してきており、常に最新の情報を統合的に理解して顧客に提供できるケイパビリティが求められるようになっているのです。