IT市場は常に進化をし続けており、そのテーマも年々変化しつつあります。ここ20年近く市場をリードしてきたITプロダクトの現状を概観してみたいと思います。

■ERP
ERPは90年代後半から大手企業を皮切りに中小の企業まで幅広く導入が進み、初期の導入はほぼ一巡しつつあります。それに代わってクラウドのERPプロダクトを導入する企業が多くなりつつある状況です。SAPなどもこれまでのライセンスプログラムからクラウドベースへとシフトを変えており、ERPもSaaSで導入する時代が到来しようとしています。

またIaaSにライセンスモデルのERPを導入して利用するといった方法をとる企業も多くなりつつあります。
ただ、パブリッククラウドは一定時間に利用が集中するとこれまでのオンプレミスの環境以上のCPUとメモリが実装してあってもパフォーマンスが著しく下がって動かないといった新たな問題もおきるようになっており、ERPもクラウドとの親和性を考えながら導入することが重要になってきており、コンサルタントの活躍領域にも変化が生じています。

CRM、SCM

CRMはすでにSaaSで利用するのがほぼ当たり前の状況になっており、ITプロダクトのなかではもっともコモディティ化が進んでいます。
ただ、フロントエンドのCRMツールは目新しくなくても、ビックデータの解析と連動させることにより新たな顧客のインサイトを解析することができるようになってきていますし、一部の企業ではAIによる機械学習をリンクさせることで顧客のペルソナの精度を上げたりするといった高次元の分析をCRM領域で展開するようにもなっており、注目されます。

すでに人口減少と高齢化社会の到来で、国内では新規の顧客を高いコミュニケーションコストをかけて獲得していくことよりも既存の顧客との良好な関係を維持することでLTV・ライフタイムバリューを最大化することに尽力する企業が増えており、ECビジネスも拡大した足元の市場では改めてCRMに力を入れる企業も増えている状況です。

■SCM
SCMな製造業のIT化の流れではもっとも早く実装が進んだ領域ですが、現在ではERPとの連携も強化され、多くの製造業は次のステージのSCMの導入を考える時期にさしかかってきています。
この領域もディープラーニングなどのAIとの連携により、これまで以上に精密な需要予測を行う企業も登場してきており、新たなステージが始まっていることを感じさせます。
またIoTとの連動でSCMを見直す企業も出始めており、次世代のサービスの導入が待たれる状況となっています。

BIツール、ビッグデータ

■BIツール
BIツールは初期の段階の統合的なレポーティング機能だけではなく、本格的に分析するアナリティクスツールが主流となってきており、ビックデータの導入とセットで考える企業が多くなっています。企業内にはERPのデータをはじめ顧客データなど豊富なデータが収集され続けていますが、それを機動的に利用できてこなかったところが多く、BIツールを利用することによりITに詳しくない部門の人間でも簡単にデータの分析と将来予測を行えるところが大きく注目されはじめています。BIツールもクラウドで提供するプレーヤーが多くなっており、ひと昔まえよりも数段簡単に導入と短時間での利用開始ができることから多くの企業に高い関心をもたれている領域となっています。

■ビッグデータ
ビッグデータはその利用が叫ばれてからかなり時間も経過してきていますが、IoTの本格的な利用を前に多くの企業が積極利用をするようになりつつあります。
とくにクラウドのデータセンターを利用することで従来のオンプレミスでの実装に比べてかなりコストも安く、しかも短期間で利用にこぎつけることができることから、この領域でもクラウドでビックデータを利用することに関心があつまりつつあります。
このように90年代からかなり導入がはかられたそれぞれのITプロダクトは依然として新たなサービスを提供するために進化を続けていることがわかります。またその背後にはクラウドの利用を断然多くなりつつあり、こうしたものもシステムの実装からサービスとしての利用に大きく変化しつつあることが理解できます。