クラウドの普及によってオンプレミスにすべてのインフラを揃えて実装していくという仕事は確かに減少しようとしています。
21世紀に入ってから多くの企業が基幹システムにERPを実装しはじめたことでインフラエンジニアは引っ張りだことなり仕事も溢れるほど市場に存在したものでした。
しかしクラウドがいよいよどこの企業でもその選択肢のひとつになってから確かに昔とは異なる状況が展開されはじめていることは事実といえます。人によってはインフラエンジニアの将来を非常に悲観した見方をし始めていることもまた事実です。

これまでにあったような大規模なITプロジェクトでもクラウドシステムを利用するのが当たり前になってきていますし、リプレースメントの案件でもオンプレミスからクラウドへの移行による構築がもはや当たり前の世界になりつつあります。
しかし冷静な視点で見たときにはインフラエンジニアの仕事はその中身がかわっていくとしても完全になくなることはないのが実際のところではないかと思います。

パフォーマンスイシューやセキュリティ面からオンプレミスは残る

しかし実際にクラウドがかなり利用されるようになったといっても相変わらずすべてがパブリッククラウドだけで賄えるたけではなく、プライベートクラウドも多いですし、 オンプレミスも重要な部分はコンプライアンス上外部に持ち出せないようなクリティカルなデータは相変わらずオンプレミスでの管理運用が続いており、ハイブリッド化や 並行利用といって使い方が中心になってきていることがわかります。
こうした動きの中ではデータセンターのファシリティ設計、ハードウエアの物理的な設計などは間違いなく減る傾向にあると思われますが、クラウドとの全体調整やチューニングの問題などはインフラエンジニアにまだまだ出番が残されています。

近年ではクラウドのIaaS上にライセンス方式のERPを移行して実装して使うといったことも多く登場してきていますが、実は20日締めや月末などERPの利用が集中するタイミングではオンプレミスと同じスペック以上のハードを利用してもパフォーマンスが下がってまともに使えないといったクラウドならではのイシューも登場してきており、依然としてクラウドだけではうまくやっていかれない領域が残されている状況です。
こうした部分にはこれまでとは違う知見を伴いながらインフラエンジニアが活躍できる領域が数多く残されているのです。

AIの世界などでは逆に専用インフラも必要な時代に

ここへ来て新たなテクノロジーを利用するために専用のインフラが必要になってきている領域も増えています。 たとえばAIなどではクラウド上で動かすだけではなく、オンプレミスに実装することで確実な結果を生み出すことが必須のものも増えていますし、話は若干脱線しますが、仮想通貨のマイニングビジネスなどでは専用のサーバーが必要で、すでにウインドウズなどのOSではないものにGPUを実装したウルトラハイスペックマシーンを多数利用するビジネスなども登場しており、クラウド一辺倒ではなくなりつつある状況です。

ただし、インフラエンジニアは今までの知見だけで勝負するのではなく、こうした社会のニーズや顧客のインサイトといったものに、マッチする形で自らのケイパビリティを高め、修正して合わせていく努力を継続して行っていくことも必要になります。 IT領域はすべてのゾーンで10年一律の世界が通用しなくなってきており、時代に合わせて仕事をアジャストできないエンジニアはインフラ関連に限らず結局取り残される運命にあることだけは肝に銘じる必要があります。 変化は脅威でもありますが大きなチャンスでもあるのです。