最近、安倍内閣が強力に推進する働き方改革の実現に伴ってよくメディアなどでも耳にするのがパラレルワークという言葉です。
本来パラレルワークは、同時並行でビジネスをすることを指しますが、この働き方改革では会社員が副業を行うことを認める言葉として使われてしまっており、本来の意味とはかなり異なる利用がされていることがわかります。

■政府が画策するのは可処分所得の増加が狙いか?
2013年からの未曾有の金融緩和で日銀が大量にETFを購入するなどして日経平均株価は26年ぶりにようやく2万4000円台まで回復し、企業業績も順調に伸びつつありますが、国民の可処分所得はついぞ伸びが示現しておらず、各企業は史上最大の内部留保金を抱えながらも従業員の給与を高めることにその資金をまったく使わない状態が延々と続いています。
そんな中で安倍内閣が人口減少、少子高齢化の中で生産性を高め人手不足を解消するために打ち出しているのがこのパラレルワークの推進で、これまで副業禁止が原則だった企業のレギュレーションを変化させて本業を邪魔しない程度の副業を認めさせるような動きに出ているのがこの流れの背景にあります。
政府はこれにより企業の給与上昇ではなく副業の増加により個別の国民の可処分所得を増やそうとする動きにでていることは間違いないようです。
この発想の入り口には若干違和感を感じますが、それをきっかけとして多くの企業がパラレルワークを意識する世の中へと変化していくことはどうやら間違いのなさそうな状況です。

本来パラレルワークが志向するものとは

しかし、もともとのパラレルワークのコンセプトは本業で増加できない可処分所得を副業で補うのが目的などではなく、同時並行でビジネスを進めることにより、複数の収入源を確保し、ひとつのビジネスには依存しない働き方を実現するのがその大きな枠組みになっているのです。
近年では特定の業界やビジネスモデルの陳腐化は激しく、生涯同じ業界、同じ仕事をやりとげることはきわめて難しくなってきています。

むしろ同時並行してビジネスを行うことで時流に乗った部分を大きく活かしていくことが重要な働き方になりますし、こうりたイノベーティブな動きが既存のビジネスを変革することにもつながっていくことが考えられることになるのです。
特定業界やビジネスに長く没頭していますと、その業界では当たり前の商慣習などにとらわれすぎて業務に変革を求めることはできなくなってしまいます。
しかし様々な業界やビジネスモデルに接することで、新たな発想やイノベーションを実現することができ、大きな力になってくれるともいえるのです。

コンサルはパラレルワークのしやすい仕事

コンサルティングの仕事で考えますと、基本的にコンサルタントは特定の業界を対象とするコンサルを主たる業務にしていますが、クラウドやIoT,AIといったソリューション、テクノロジードリブンな分野では様々な業界にアプライできるような柔軟性のある仕事の進め方を行うことができるため、こうしたパラレルワークを実現しやすい環境にあるといえます。
異なる業界でのコンサルといったことを考えてみるのも一歩パラレルワークに近づくアプローチであるといえそうですし、自らがコンサルではなくリアルプレーヤーとして業界にエントリーしてビジネスをはじめるといったことももっとも可能性のある存在といえます。

多くの企業および従業員がこうしたパラレルワークを志向するようになると特定業界だけに精通しているだけではコンサルタントも物足りない存在になりかねません。
足元のビジネスのスピード感と変化の速さについていくためにもコンサルタントはパラレルワークという発想をつねに意識して働いていくことが重要になるのではないでしょうか。