エンジェル投資家と起業家のそれぞれの目的について
起業をする場合には一定の資金というものが必要になります。その資金を早い時期に提供してくれる存在がエンジェル投資家です。
実際に起業する場合には起業家は資金調達をする必要がでてきますが、その一つとして考えられるのがエンジェル投資家からスタートアップの早い段階で資金の提供を受けることになります。
しかしこの両者の立場にはその目的が微妙に異なるものとなります。今回はそんなエンジェル投資家と起業家のそれぞれの目的についてまとめてみることにします。
■そもそもエンジェル投資家とは
まず最初に理解しておかなくてはならないのはエンジェル投資家の存在です。
エンジェル投資家は基本的にスタートアップなどに投資してくれる個人投資家のことをいいます。
その名のとおり起業家を早い段階から支援してくれるからエンジェルと呼ばれているもので、企業に準備段階、もしくは法人成りする段階から資金面で事業立ち上げを支えてくれる存在となるのです。
世の中にはベンチャーキャピタルという起業に資金を提供してくれる存在もありますが、こうした事業体はスタートアップステージのみならずその後大きく成長して上場やM&Aといった段階まで見通して投資を行うものが多いことから金額規模も大きなものになり、しかも投資判断もかなり厳密です。
しかしエンジェル投資家のほうは利益率や投資対効果の問題とは別に自らの経営者などでの経験をもとに手持ちの資産を活用して若い起業家や成長分野での新規事業を育成し、応援していきたいといったよりエモーショナルな目的意識をもっていることがベンチャーキャピタルとは異なるものになります。
したがって投資成功率はあまり高くないかも知れませんが、やる気のある起業家を応援するのが大きな特徴といえるのです。
エンジェル投資の方法として
一般的にエンジェル投資家は株式会社形態への出資であれば第三者割当増資や転換社債型新株予約券付き社債を購入する形で投資を行ってくれることがほとんどです。
このエンジェル投資が国内でも比較的案件が多くなってきているのには税制上の優遇制度が設けられたことも大きな後押しとなっています。
エンジェル税制では創業から10年未満の企業を対象として出資をして株式を取得した個人には株は所得控除や株式譲渡益からの控除が認められるようになっていますし、投資した未上場株の売却や投資対象企業の破綻、解散などによる損失がでて時には株式譲渡益からの損益通算が可能になっている点もメリットとなっているのです。
株式投資などで利益がでている個人ならエンジェルとして投資してうまくいかなくても税制上優遇されるというわけですから、お金持ちなら比較的気兼ねなく投資ができる点が投資する側のインセンティブになっているのです。
起業家にとってのメリットとは
起業家にとってもエンジェル投資家を利用するメリットが明確に存在します。
公的機関の公庫や金融機関から借り入れを行うことに成功した場合でもこれは借金ですから利息もかかりますし返済も余儀なくされますが、エンジェル投資家からの資金は株式等を譲渡することにははりますが、目先資金の返済の必要がありませんから非常に自在性の高い資金調達となるのです。
また仮に事業に失敗しても投資資金の返済の必要がなりことから、事業をたたむ際にも借金だけが残るといったリスクが軽減されることは大きなメリットとなります。もちろん国内では事業破綻というのは大きく社会的信用を失墜するものではありますが、資金調達としてはかなり理想的なものといえるわけです。
初めから失敗することを前提にして起業する経営者はいないと思いますが、まさかの時にもかなり安心できる存在がエンジェル投資家からの資金提供なのです。
このようにエンジェル投資家と起業家にはそれぞれメリットが存在することから、起業家はエンジェル投資家からの支援を受けることを非常に歓迎するようになっていることがわかります。
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