ITガバナンスというのは多くの企業でよく聞く言葉になっています。
これは経営戦略に即したIT戦略の企画・立案とその履行というのが正しい定義になります。ITガバナンスを確立するうえでかなり需要になるのがそのバックエンドにあるIT戦略ということになるのです。

■コーポレートガバナンスから派生した言葉がITガバナンス
もともとこのITガバナンスというのはコーポレートガバナンスから派生したする言葉と言われています。コーポレートガバナンスが企業経営を監視し規律ることだとすればITガバナンスはまさに企業内のIT活用を監視し、規律することともいえるわけです。
ひと昔前までは企業内のIT活用はポイントソリューション的なものが多く、事業部や各組織ごとに様々なITソリューションが導入され、サーバー一つ取ってみても専門のセクションが管理することさえままならない状況が国内でも長く続くこととなりました。

しかし近年ではERPの導入により企業内のすべてのプロセスやデータというものが統合的に利用できるようになり、いよいよITガバナンスを発揮することがコーポレートガバナンスの発揮につながるようになってきていると言えるのです。

人手不足の中でITガバナンスはますます重要なものに

人口減少、生産労働人口の縮減という厳しい状況の中で、企業はITやAIと活用することで人が行ってきた業務の多くをIT関連のソリューションが取って代わる時代がとうとう到来しようとしています。
RPAなどはまさにその先兵となる部分であり、さらにこの先AIがそれに実装されるようになれば、企業プロセスの多くの部分をITが主体的に進めていくことが企業活動そのものになる時代が現実のものになろうとしているのです。
もちろん企業の中心は人であることには変わりありませんが、人をサポートするITがより重要度を増してくることは間違いありません。

こうなるとITガバナンスはまさにコーポレートガバナンスを履行するための大きな達成要件にもなってくるというわけで、さらにITガバナンスを実現するためにいかに企業の経営戦略にマッチしたIT戦略を構築し実行するかがきわめて重要になってきているのです。 だからこそIT戦略はITガバナンスの履行にとって非常に大きな影響を与えるファクターになってきていることが理解できます。

ITがビジネスを支援ではなくITこそがビジネスという時代

ロボティクスソフトウエアやAI実装のソフトウエアの導入が進みますと、20世紀後半から人の生産性を上げるために導入されてきたITのシステムというものはもはやITでかなりの人の代わりを行うことにより労働力不足を補うという企業経営上では非常に重要な根幹を握るものになってくることがわかります。
ロボットやAIの導入は決して人の仕事を奪わないと言わていますが、もはや人がコモディティ化した業務を行う必要はなくなっており、企業経営上ひとが発揮すべき能力というものにも大きな変化が現れようとしています。

経営戦略に合致したIT戦略の実施で培われた社内のITシステムを的確にガバナンスしていくことが経営上非常に大きな役割を果たす時代がやってくることになろうとしているのです。これまではCIOはCクラスの役員の中ではIT部門を統括する人間というイメージが強かったわけですが、これからはCIOがCEOへとプロモーションする企業も多くなりそうで、ITガバナンスを理解できる人間こそが経営者に向いているという世の中がやってくることになりそうです。企業内におけるITの役割もこの先10年で劇的に変化することになるのではないでしょうか。