若手をどう育てるのかというのはコンサルティング業界に限らずすべての業界で共通する問題といえます。
まあどの時代でも上の人間からみると若手は危なっかしい存在として見られがちですが、コミュニケーションのプロトコルが変わってきていることでうまく意思の疎通ができなくなるケースも多く、ある意味で深刻な問題ともいえる状況です。

コンサルファームは本当に若手を育てているのか?

実際にコンサルファームに在籍していますと、若くても非常に優秀な人物を目にすることがあります。
当然こうした人物はパートナー、マネージャークラスからも重用されて昇進も早くなるわけですが、果たしてこうした人材は育成されてそうなったのかということになると甚だ疑問が残ります。
つまり最初の雇用はヘッドカウントを増やして置き、そのなかで優秀な人物だけをピックアップしているだけで厳密にいうと育ててはいないのではないかというのが率直な感想です。

もちろんモチベーションが高ければ会社の費用で英会話を習い、さまざまな学習機会を経て業務に必要な知見を身に着けることが可能なのがコンサルファームのいいところではありますが、日業業務だけでもかなり忙しいとなると自己啓発のために時間を使うのはかなり難しく、多くの社員が均等に育てられているかと言われると甚だ疑問な部分も多くなります。

インフォーマルな小集団の中で一部が育成されている可能性も

コンサルティングファームはつねにアサインを受けて異なるプロジェクトに配属されることになるわけですが、パートナーには特定のシニアマネージャーがついており、その下にもお気に入りで常に使えるマネージャーが存在するといった企業本来の組織上には存在しないインフォーマルなグループが形成されているのが実際のところです。
やはりパートナーにしても気心がしれたシニアマネージャーがいてしっかりプロジェクトを仕切ってくれるからこそ営業活動にも力を入れられるわけでひとりひとりのパートナーがこうしたインフォーマルな組織を形成しています。

仮にコンサルレベルからこうした贔屓にしてくれるシニアな人々に囲まれて毎回プロジェクトアサインが行われるようになると確かに確実に育成してもらうことができますし、上司からも多くのアドバイスを受けることができ、自分でも目標設定をして日々の業務を改善していくことが可能になるのです。
結局コンサルファームでもそうした派閥ではないですが、一定の固定集団の中に潜りこめないと生き残れないのかという話になるとかなり興ざめではありますが、人だけが資産の集団になるとやはりこうした傾向は間違いなくあることがわかります。
つまり目をかけられる特定の存在はそれなりに育成がはかられることになるわけですが、それ以外のその他大勢でプロジェクトの人材不足であっちにもこっちにもアサインされるようになってしまいますと結果的に誰からも育ててもらえずに仕事だけ酷使されてお仕舞いになりかねないのが実情ではないかと思います。

新卒から外資系などのコンサルに入った人間はもともと社会人としてこういうことにしか接していないので別になんの違和感も覚えないようですが、本邦系の企業から転職してきた人材はまず会社に決められた席もなくいつも接する上司も毎回変わるといったプロジェクトならではの状況にかなり精神的に参ってしまいすぐに辞めていくケースもみられるほどで、一定のインフォーマルな集団の中に所属できた場合はそれなりの育成がはかられると言えますが、それ以外の多くの人達は自力で育っていかないかぎり誰からも育てられない存在になっているのではないかと危惧するところです。
こうした面もコンサルファームで生き残るためのかなり難しい側面といえるのかも知れません。