コンサルタントの定年について考える
近年では高学歴の新卒者が就職先としてかなり積極的に考えるようになっているのが外資系のコンサルティングファームですが、生涯一社で勤め上げるというスタイルが国内でもかなり薄れている中にあっても、コンサルティングファームの定年というのはかなり特殊な状況であることはあらかじめ十分に知っておく必要があると思います。
■本邦系のコンサル企業は60歳までしっかり働けるところも
まずシンクタンクのようなものを併設している本邦系のコンサル会社の雇用はかなり日本的で、いわゆる60歳定年までしっかり働くことができるところもそれなりに多く存在しているようです。
まさに日本的な企業でこうした会社は大きな問題もないでしょうし、ひょっとするとこの先定年の時期がさらに後ろにずれることもあるのかもしれません。また本邦系のSI会社もこれに準じるものがあり、この領域でITコンサルとして働いた場合には普通の企業に就職したのと同じようにやはり通常の定年まで働くことが可能になるケースも多いことと思われます。
問題は外資系コンサルティングファーム
ところが外資系コンサルティングファームでは状況が一変します。一般的に経営層となる社長、副社長、役員クラスならば50代の人間が存在しますが、それ以外のパートナークラスもほとんど50代手前あたりから退職することになり、シニアな人はほとんど会社には残らないのが現実の世界となっています。
パートナーレベルの人間の退職時期の平均でいいますと40代後半あたりが非常に多く、若くして高額の収入を得るパートナーになる人も多い反面長く続けられるビジネスではないケースが多いことも理解しておかなくてはなりません。
ITに精通したパートナーでは事業会社にCIOとして迎え入れられるケースもありますが、すべてがそうはならないことも多く自営業としてコンサルタントを続けるひとも少なくないようです。
ストックオプションを得ることで退職時には数十億を手にできれば早期にリタイヤしても食べるのに困ることはないでしょうから退職するご本人は何の心配もないのかも知れませんが、生きがいといった視点でみたときに長寿社会の現代で60歳まで働くことができない外資系のコンサルファームが本当にもっともいい仕事なのかどうかということについてはよく考える必要がありそうです。
この先Up or Outという発想も変わる可能性
外資系企業出身者ではCEOとして内外の有名企業をCクラスで渡りあることのできる人物も登場していますが、ことコンサルティングファームパートナーレベル出身者ということになると国内では確かに有名人も多いことながらその絶対数から考えるとポストコンサル実業界でそれなりの座に収まって活躍している人は意外に少ない印象もあります。
ベストプラクティスも多く知っていて戦略策定に精通する経営コンサルタントが実業に出てみたら必ずしもうまくいかないということもあるのかもしれませんが、むしろ若手のうちにコンサルファームでお世話になって早めに事業会社に移動した人たちのほうが長く実業界で活躍しているようにも見えます。
外資系ファームの場合、とにかく人の出入りが激しいのは確かですが、本場米国にしても日本にしても意外にCEOやカントリーマネージャーといった経営者は生え抜きが多く新卒から一筋で働いている人が多いのもまた事実です。
多くの外資系ファームでは60歳までは働けないことを従業員が一番よく知っていますから足元の状況でも特別不平や不満は出ませんがこの業界に飛び込むなら実情がこんなものであるということはよく理解しておく必要がありそうです。
ただ、国内は少子高齢化が進んでいますからここから今後数十年先の外資系コンサルファームも定年に関する考え方が大きく変わる可能性がありそうです。
今のUp or Outを続けていたのでは雇用を確保できない時代が到来することは充分に考えられるからです。
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