マーケティングとひとくちに言いますが、実はマーケティングは製品、価格、セールス、店頭、広告、販促、アフターフォローなどの、製造よりの部分から流通・販売といった様々なエレメント全ての掛け算の結果によって得られるかなり複雑なプロセスになりますから、その掛け合わせエレメントの一つでもゼロファクターがあると結果はゼロのなるという厳しいものです。
したがってマーケティングコンサルタントと呼ばれる職種は本来このエレメントの全てに精通している必要がありますが、実際にこの職種を名乗っている人たちはその中の製品部分に特化していたり、流通や販売に特化しているケースが多く、想像以上に部分的なエキスパートが多く存在しているのが実情です。

また、FMCG,CPG、B2Bなど扱う商品やサービスごとにエキスパートがいるのもまた事実であり、企業のマーケティング部門にいた人間がコンサルとして独立して働くケースもあり、オールラウンドのマーケティングコンサルタントというのは実は意外に少ないのもひとつの特徴といえます。
マーケティングコンサルタントを名乗る人たちは結構異なる領域の仕事をしていることが多いといえるのです。

戦略系ファームは個別商品のマーケティングは行わない

また少し引きの視点で考えますと、戦略系コンサルティングファームは新規事業や競合他社との事業環境分析として商品戦略のことをコンサルすることはありますが、個別商品をどう売っていくか、あるいは売れなくて困っているという話に関してのマーケテイングコンサルティングは基本的に行っていません。
国内ではこの部分は大手の広告代理店と競合する部分になるわけですが、まず広告の領域になりますとクリエイティブという数値化して枠組みを考えたのでは解決がつかない部分を触ることができないうえ、テレビスポットや新聞といった既存のメディアについてはいくら戦略を考えても買い付けは電通、博報堂DYでないと実現できないという大きな問題から、個別の消費財ブランドのマーケティング戦略には係わってこなかったというのが実情です。

したがって消費財領域のマーケテイングコンサルタントは国内では広告領域をドメイン、バックグラウンドとしているプレーヤーも多くなっています。

デジタルビジネスの拡大でファームと広告代理店が競合

ただし、デジタルトランスフォーションが進んで現在ではコンサルティングファームも大手の広告代理店もデジタルマーケティングの領域に手を伸ばしつつありますから実際には競合することも多くなっており、マクロ的に見ますとコンサルティングファームが既存の広告領域のほうにデジタルを切り口にして入り込んできていることがわかります。
電通などでは10年近く前からアクセンチュアなどと競合する時代がやってくるとは想定していたようですが、いよいよそうした時代が到来しようとしている状況にあります。
今後はマーケテイングコンサルの世界も大手のコンサルファーム出身者が席捲することが予想されます。

■現状のマーケティングコンサルタントは多様化
足元のマーケティングコンサルタントのビジネスに話を戻しますと、実はこの職種を名乗る人たちのバックグラウンドはかなり多様化しており、製品開発と差別化戦略部分だけに特化しているコンサルタントも存在しますし、店頭や流通といったセールス側面に特化しているマーケティングコンサルタントも存在しており、対応している仕事についてはかなりばらつきがあるのが実情です。
ただ、今後はより体系化されたサービスを提供できる能力をもった人たちがマーケティングコンサルタントのマジョリティになっていくことになりそうで、マーケティングオートメーションの導入などを含めてIT領域にも精通した人材が求められるのは当然の流れといえます。
海外ではこの動きは強くなっているようですが、国内に関して言いますと戦略コンサルやITコンサルなどについての支払い単価はある程度固定的なレベルが確立しているものの、マーケティングレベルについてのコンサルフィーは人によってまちまちのところがあり、しかも大手広告代理店は巨額のメディアバイイングの扱いとバーターの形でレイバーベーストフィーをクライアントに請求しない、みかけ上無償の奉仕ビジネスを行っているケースもあることから既存のコンサルティングビジネスよりも国内での規模はそれほど大きくないのが実情です。またマーケティング部門でフィーを支払える企業はほとんど外資系のクライアントだけであり本邦系の企業はそもそも予算をもっていないという厳しい側面もあります。

したがって国内ではマーケティングコンサルタントを名乗っていてもすべてのプロセスに精通するのではなく一定領域だけに特化している人間が多いのはこうした背景にも大きな影響を受けているようで、実際企業からのコンサルティングニーズもよく中味を精査してみますと一定領域についてのアドバイスを求めているケースが多くなっているようです。