新元号・令和がスタートし国内では新たな時代への期待も高まっているようですが、冷静に世間を見渡してみますと史上最大の10連休は謳歌できたものの、株式市場には特段ご祝儀相場は訪れず、むしろ世界的にはより大きな枠組みでのパラダイムシフトが進もうとしていることがわかります。そんなこの時期にコンサルタントが読んでおくとためになるいつくつかの本についてご紹介しておくことにいたします。

1)アフターデジタル


一冊目にご紹介するのはアフターデジタルです。すべてオンラインになった世界というのは今や当たり前の感覚がありますが、本書ではオンラインメディアが主流の時代になったという現状認識ではなく、中国で進行しているUXを競争原理とする企業戦略の大きな変化をとらえ、こうした潮流からすっかり取り残されつつある日本企業の動向に警鐘を鳴らす内容となっています。
アリババをはじめとする中国企業で驚くべき進化を遂げているUX戦略を解説するとともに後を追う形になっている本邦企業がどのような対応をとるべきかの指針を明らかにしています。
国内ではUXはデジタルマーケティングにおけるニッチなジャンルの一つとしてしか認識されていませんが、中国ではアリババとはじめテンセントなどが全精力をあげてこのUKの提供を進めようとしており、そこから新たな行動データを獲得するという従前の仕組みにはまったくないエコシステムの拡大戦略をとろうとしていることがわかります。いまや何かと米国、中国に遅れをとりがちな国内のデジタルビジネスに大きなヒントを与えてくれる一冊といえるのではないでしょうか。

2)GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略

二冊目にご紹介するのが GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略です。
足元では米国による安全保障上の理由からのファーウェイの禁輸がきっかけとなりいきなり米国系IT企業と中国系IT企業の対立構図ということが顕在化してきました。
21世紀のはじめからこれまでは米国のIT企業がいち早くグローバル化を進め、それに中国系IT企業が追随する動きをとっているように見えたわけですが、今や米国系IT企業と中国系IT企業の先進技術に関する主導権争いの時代に突入しており、そこに中国政府が複雑に絡みあることにより米中の対立の大きな火種にもなろうとしている状況ですから、こうした企業戦略や先端ビジネスにおけるイニシアチブの現状を理解しておくことは非常に重要になってきている状況です。
GAFAとはご存知のとおりグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社を指しますが、BATHはバイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの4社の略号で問題化するファーウェイも含まれています。まずはこの本で米中の巨大テクノロジー企業8社の全容と戦略を理解しておくことがここからのビジネスにも大変有益なものになると思われます。内容は平易ですから短時間で完全理解のできるものとなることでしょう。

3)グーグルが消える日

3冊目はグーグルが消える日です。
いささかショッキングなタイトルのこの本は、ブロックチェーンの普及により莫大なデータを有するグーグルの全盛期が終わるというかなりショッキングな内容を語っています。 この本の著者のGeorge Gilderは1994年にLife after Televisionという著書を出版し携帯電話が普及する以前の段階で10年後には携帯電話(現在のスマホ)がコンピューターの主流になりメール、ニュースを表示する社会が到来し財布の感覚で持ち歩き、音声を認識し、街中をナビしてくれる世の中を予言して時間軸は若干遅れたものの見事的中させた人物です。ただ広告がなくなるとか大企業ではなく人々が力をもつ世の中は残念ながらまだ実現していない状況で、すべてが的中するわけでもないことを示唆しています。
同氏によれば今から10年後にグーグルが消えてなくなるとは指摘しておらず、依然として重要な企業として残っているであろうことは予言していますが、データセンターにより巨大なデータを保有することが競争力の源泉というグーグルのビジネスモデルが終焉し、これまで市場のイニチアチブをとってきたシリコンバレーのビジネスのやり方や考え方などの仕組みが崩壊することを予測しているわけです。

2冊目と3冊目は若干方向性が相反するようにも見えますが、トランプが米国大統領に就任してから確実にグローバリズムという考え方は大きく後退をはじめており、 経済はよりブロック化が進みかねない状況になりつつあります。しかし米系のコンサルティング企業がThougt Leadershipを確立してきたコンサル業界ではこのグローバリズムをかなり意識したベストプラクティスや業務提案を進めてきただけに、ここから大きく軌道修正を余儀なくされる時代に直面しつつあるわけでグーグルが消える日のような論拠についても理解しておくことが重要になると思われるため、あえて取り上げさせていただいております。
どの本もそれほど読むのに時間はかかりませんのでお仕事の合間の頭休めとして一度目をとうしてみてはいかがでしょうか。